サルビアの甘い蜜
ずいぶんと低くなった夕暮れの日差しが
道路の花だんでまっ赤に咲いているサルビアを照らし
長い影をつくっていた。
子どもの頃、友達に「サルビアの蜜は甘い」と教えてもらった。
・ ・ ・
サルビアの花びらをつまんで引っ張ると
顎(がく)のところから抜けるようにきれいにとれる。
その付け根の部分をチュッと吸うと、ほんのり甘い。
そのことを知った子供の僕らは、サルビアを見つけるたびに片っ端から蜜を吸った。
僕らの通ったあとには、蜜を吸われ、捨てられた花びらで赤い道ができていた。
なんせ子供だから加減を知らなかった。
このままじゃ町中のサルビアが吸い尽くされるかも…という、そんなある日
いつものように蜜を吸うため花びらを抜き、口にもっていこうとすると
視界に何やら黒いものがチラッと映った。
“黒いもの”の正体は小さなアリ。
甘い蜜に群がっていたのは僕らだけじゃなかった。
あわててその花びらを捨て、それ以後再び蜜を吸う気にはなれなかった。
こうして町のサルビアは無事に守られた。
・ ・ ・
ものすごく久しぶりに、サルビアの蜜を吸ってみた。
やっぱりほんのり甘かったけど
あの頃吸った蜜はもっと甘かったような気がした。
注意)
このご時世、道ばたなどに生えているものを口に入れる際にはよくご注意の上
くれぐれも自己責任でお願いします。